February 20, 2010

ボンガンドの人は,村の中にある広い庭に立って,大声で朗々と喋りはじめることがある。この語り方を,彼らは「ボナンゴ」と呼んでいる。ボナンゴとは何か,彼らに質問すると,「公式見解」としては「村の人たちに,ニュースを知らせたり,ものごとを教え諭したりすることだ」という答えが返ってくる。 しかし,ボナンゴにおいては,話し手は一生懸命力を込めて語っているのだが,聞き手はその語りに興味を示した様子を見せない。 私はボナンゴが始まると,しばしば近くにいる人に「あれは何を言っているんだ?」と質問したのだが,その答えは「彼は昔からのしきたりについて言っているんだ」などといった大変そっけないものだった。

ボナンゴの内容は,情報伝達的な内容であることもあるが,以下に示すような,日本人の常識からすると,村中に聞こえる大声で喋らなくてもいいように思えるものも多かった。

  • 「自分の孫が学校に行きたがらない」
  • 「暑くてたまらん」
  • 「フクロウが鳴いている」(フクロウは邪術師の化身と考えられている)
また通信用の太鼓や指笛でも,ボナンゴが語られることがある。数十キロメートル先まで響き渡る太鼓で,たとえば「腹が減った」「この頃雨ばかりだ」などという内容が打たれる。そういう太鼓言葉も,ボナンゴと呼ばれるのである。彼らは遠くから太鼓が聞こえると,誰かが死んだニュースか,などと思って耳を傾けるのだが,それが上のような内容であったら「ああ,ボナンゴか」と言って注意を解くのだという。